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年金の本当のおはなし
<「年金の常識」の間違い>年金制度は破綻するのか?
今回から、<「年金の常識」の間違い>シリーズとして、マスコミ等でよく言われていて多くの方々が思いこんでいる事が、間違いだらけであることをお話していきたいと思います。
このシリーズに書くような事を理由として煽るような記事を書いている人は、まず疑って下さい。その人は年金について全く理解できていない人です。
残念ながら、そういう人は社会保険労務士にもいます。まして、ただの「経済評論家」など、全く理解していない人が殆どです。
どういう肩書なのか、どのメディアで書いているか(言っているか)に関わらず、その内容がどのようなものなのかをキチンと見定めて下さい。

まずは根本的な事からお話したいと思います。

私が年金に詳しいとわかると、本当に必ずと言っていいほど聞かれるのが「年金は破綻するのですか?」あるいは「年金って破綻するんですよね?」ということ。
はっきり言いまして、破綻するか?しないか?で言えば破綻はしません。というより、破綻させません。
年金制度は国の制度です。国が運営する以上、破綻させることはできないのです。そのために、現在の年金制度は破綻しないように設計されています。もし、年金制度が破綻するとすれば、それは全国民が「年金は不要だ」と判断し、国会で承認された場合のみです。それまでの間は、どのような形になろうと、絶対に破綻させることはできないのです。
すでに年金によって生活されている方がいらっしゃる以上は、年金制度そのものを廃止することは不可能でしょう。今、保険料を支払っている方も、少なくとも支払った保険料分の給付は受けたいと思うのが当然の心理です。であれば、少しでも良い形でこの制度を維持していく方策を考える事こそ重要なのです。
年金は国が行う事業の中で一番スパンの長いものです。一人の人だけで考えても、40年間の保険料振込期間と平均で20年程度の年金受給期間があります。しかも、それが毎年重なっていきます。一方で世の中の状況はどんどん変わっていきます。制度を破綻させないためには、その変化に合わせて変更をしていかなければなりません。その「変更」は「破綻」とは全く違うものであり、より良い変更をこそ考え、また考え続けなければならないのです。変更する=破綻と考えるのは全くの間違いです。

時々、いくつかの厚生年金基金(企業年金)が破綻した事から年金制度全体も破綻するかのように言われる事がありますが、基金と国の年金とでは規模も制度の作りも全く違います。これらは明確に分けて考えるべきことです。確かに、企業年金が破綻した事によってそれに加入していた方には不利益が発生していると思いますが、だからと言って国の年金制度も同列に語るのは正しくはありません。

では、なぜこのように年金制度が破綻するかのような話になったのでしょうか?
この根本には、保険料を上げたかった厚生労働省(社会保険庁)の思惑があります。「このままでは年金制度が立ち行かなくなる!」と言う事によって、「だから保険料を上げます」という道筋を作りたかった厚労省のプロパガンダが「年金制度破綻」という話に発展したのです。マスコミの皆様は政府や国を叩く事によって売上げを伸ばされる傾向にありますので、「制度破綻」というようなお話は格好の題材となったのではないかと推察できます。

問題は、その間違いを厚労省自身が全く訂正しないどころか、ますます増長させていることにあります。
「年金制度が破綻するかもしれない」という思いから、多くの方々が保険料の支払いを躊躇され、その結果として年金額が少なかったり、最悪年金がない人が発生し、何より制度の根本を揺るがしかねない状況になっているのにも関わらず、「年金制度は破綻しない」ということをキチンと説明しようとはしていません。これでは、国民の皆様が不信に思われても当然でしょう。
問題なのは、自己保身から正しく説明する代わりに、今回の素案にも載っているような正当ではない加算をして年金制度を歪めようとしていることです。このような事の繰り返しでグチャグチャになっている制度を、ますます混乱させようとしています。このような小手先の制度変更ではなく、正しく説明をして国民の皆様の理解を得る事こそ、政府の行うべきことだと思います。
政府が正しい判断をされる事を強く望みます。


(2012.1.20)






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